介護サービス利用する認知症の方とコミュニケーションを図ることは、介護職員にとって容易ではありません。認知症になれば、家族の顔さえ忘れてしまうケースも珍しくないからです。また、私物への執着心が強まったり、被害妄想に捕らわれたりして、身の回りの世話をしてくれる介護スタッフを泥棒呼ばわりすることもあるようです。介護職員は、こうした認知症の方をなだめながら、入浴や食事などの介助を行っていかなければなりません。したがって、対応が難しい言動を繰り返す高齢者に対して、ついつい子どもを相手にするような言葉を掛けてしまうことがあるでしょう。
幼児をなだめるようなスタッフの姿勢は、要介護者の硬直した態度を軟化させることには効果があるかもしれません。しかし、認知症患者の中には、時折正常な判断力を取り戻すことがあることがあります。そのため、自分が幼児のように扱われていることを認識すると、劣等感や屈辱感を感じることもあります。ですから、介護職員は、このような一時的回復の現象が起きる事実を踏まえて、日ごろから高齢者の心を傷付けるリスクを回避しなければなりません。
そして、そのためには、日常的に高齢者に対する礼節を重んじる必要があります。たとえ認知症の方が異常な言動をとっても、介護職員は敬語を使って、接することがポイントです。幼児をしつけるような対応を行っていると、最悪の場合モラルハラスメントにつながることもありえるので、どんなときでも介護サービスを利用する方に対しては、丁寧な対応を徹底するようにしましょう。